受賞作品と講評〔京滋インテリア協会〕


受賞作品と審査委員長講評

評 : 京都精華大学 デザイン学部 教授 佐藤 敬二

最優秀賞:「暗灯野」 三浦 太輔さん、矢部直輝さん

講評

この作品は空間を切り取るようにLEDで照らす、ユニークなコンセプトであるが、実は多くの環境照明の専門家の間では、モノそのものを照明するのでなく、空間に建物やモノを浮かび上がらせるという手法は結構よく使っている。

多少受賞狙いの感が有り、一般には理解し難い所もあるだろうが、木工技術の良さと相まって完成度の高い作品となっている。玄人の審査員の間ではほぼ満場一致に近かった。

ただ、「最灯野」というネーミングは意味不明で良くない。また展示に当たっては、木工制作協力者などの名前を併記するべきであろう。


優秀賞:「つぶら」 涌波 まどか さん 

講評

青磁のお皿状のものとドーナツ状のものを三段組み合わせ、間接照明としている。陶磁器製の照明具はえてしてその技術の未熟さで、危なっかしい作品が多い中、この作品は製陶技術がしっかりしており、安心して見られる。全体としては纏まっているが、構造を組み立てるに当たり、見えないところの加工にも、神経をもっと使った方が良いと思う。

優秀賞:「灯菓子」 小西 啓陸 さん

講評

七宝繋ぎ文様が一瞬竹の編組であるかのように見えるが、灯菓子というネーミングから作者の意図が汲み取れ、壊れやすい京都の落雁の様な雰囲気が伝わってくる。磁器のように見える素材も合成樹脂をうまく加工しており、光源から透ける明りをうまく処理している。

ただ、木製の台のデザイン処理をもう少し考えてほしい。

佳作賞:「七宝つなぎ」 安田 久世 さん

講評

陶器の量感が感じられ、よく見ると七宝繋ぎが「図」と「地」のように京都らしくデザインされ、本来「地」となる部分から光が漏れてくる。明りが漏れるのをうまく計算された緻密なデザインである。過去にデザイナーと組んで作品制作にトライしてきた実績を感じる。また製陶技術も安定しており、好感が持てる。

難を言えば、台座の部分が重たい感じがする。陶器でない材料で軽い感じの足にした方が良いのではないか?

佳作賞:「鼓打つ」 小野 彰夫 さん

講評

一見何でもないように見えるが、かなり高度な針金の溶接技術が要求される作品である。ふつう前面に和紙を貼りたくなる形状であるが、透かす部分と和紙の部分を作り光源をちらりと見せ、効果的な仕上げになっている。

佳作賞:「赤楽菊置上掻き落とし照明」
吉村 楽入 さん

講評

柔らかい楽の土での造形は難しいが、その柔らかな赤楽のイメージと、置上げた菊の白い釉薬が効果的に雅な感じを現している。菊の花びらの一部を透かし、掻き落とした部分も効果的で、京都らしい琳派的な神坂雪佳の雰囲気を彷彿とさせ、さすが京焼のセンスが感じられる。

奨励賞:「夢幻」 侯 芳芳 さん

講評

厚紙とコンピューターで模様を切り抜いたワーロン紙を組み合わせ、京都らしい流水に千鳥と菊と紅葉を散らした模様に仕上げている。

全て自分で制作した学生らしい作品で好感が持てるが、上部の蓋の様な処理に苦労の跡が見える。

奨励賞:「灯籠もみじ」 石川 草規 さん
新矢 郁歩 さん  吉野 千春 さん

講評

丸いガラスと竹編組を組み合わせた作品でストロボライトと明りを組み合わせた力作である。既製の金魚鉢で有ろうか、都合の良いサイズが有ったものだが、自分たちで編んだ竹の編組とうまく合わせた学生らしい作品である。京都らしさの表現を竹ともみじで表現しているが、少しストレートさを感じる。

   

受賞作品と講評

今回の出品作品は力作が多かったが、素材に陶磁器、木工、石、和紙など京都らしい素材の出品が多く感じられた。入賞したものはそれぞれ素材が適切に使われ、明りの効果も良かったが、中には素材の特性を生かし切れていないものも見かけられた。本来の灯りを逸脱したコンセプチャルなものや、光のアート、手芸的な作品も有った。

本来のインテリアの照明の有り方の研修会を経た後、コンテストを行っては如何であろうか?照明の基本を知った上で芸術的な明りや、手芸的な照明を作るのは良いが、明りの基本を無視した作品(自己満足的作品)も見かけられた。是非毎年灯り作品展を続けてほしい。